毎日、汗を流しながら現場で足場を組み上げる。仲間とのチームワーク、そして自分の手で巨大な建造物の土台を作り上げていく達成感。足場屋という仕事には、他では決して味わえない大きなやりがいがあります。しかしその一方で、ふとした瞬間にこんな不安が頭をよぎることはないでしょうか。
「この体力勝負の仕事を、10年後も同じように続けられるだろうか?」
「給料はこれからちゃんと上がっていくのかな…」
「世の中はどんどん自動化されていくけど、自分の仕事は大丈夫だろうか…」
特に、働き始めて数年が経ち、仕事にも慣れてきた頃にこそ、こうした将来への漠然とした不安は大きくなりがちです。目の前の仕事に追われる毎日の中で、10年後の自分がどんな立場で、どんな働き方をしているのか、明確なイメージを描くのは難しいかもしれません。
ですが、安心してください。あなたのその不安は、真剣に仕事と向き合っているからこそ生まれる、ごく自然な感情です。そして、その不安を解消する鍵は、未来を正しく予測し、今から備えることにあります。この記事では、業界を取り巻く環境の変化をデータと共に読み解きながら、10年後も「仕事に困らない職人」「選ばれ続ける職人」になるための具体的な道筋を示していきます。
【光と影】データで見る足場工事業界の10年後

足場屋の未来を考えるとき、ただ闇雲に不安がる必要はありません。まずは客観的な事実として、業界に吹く「追い風(光)」と、向き合うべき「逆風(影)」の両方を冷静に見ていきましょう。
光:なくならない需要とAIに代替されない価値
まず、明るい側面からです。結論から言えば、足場屋の仕事が10年後になくなる可能性は極めて低いと言えます。なぜなら、日本国内では今後も、老朽化したインフラの修繕や、都市部の再開発、住宅のリフォームなどが継続的に行われるからです。国土交通省の建設投資見通しを見ても、建設業界全体の仕事量は安定して推移することが予測されています。建物がある限り、それを建て、直し、解体する工事は必ず発生し、そのすべての現場で「足場」は不可欠なのです。
また、「AIに仕事を奪われるのでは?」という心配も、足場屋に関しては当てはまりにくいでしょう。現場は一つとして同じ条件の場所はなく、天候や周辺環境に合わせて臨機応応変に対応する判断力や、複雑な形状の建物に合わせて足場を組み上げる高度な技術は、現在のAIやロボットには真似のできない、まさに「職人技」だからです。この人間ならではのスキルこそが、足場屋の最大の強みなのです。
影:避けて通れない3つの課題
一方で、楽観視ばかりもしていられません。業界全体が抱える3つの大きな課題にも目を向ける必要があります。
一つ目は、「労働人口の減少と高齢化」です。若い世代の担い手が不足し、熟練の職人たちが引退していく中で、一人ひとりの職人が担うべき役割と責任はますます大きくなっていきます。
二つ目は、「安全基準のさらなる厳格化」です。建設現場での事故を防ぐため、法律やルールは年々厳しくなっています。常に新しい知識を学び、安全に対する高い意識を持ち続けられない職人は、現場から必要とされなくなるでしょう。
そして三つ目は、「新技術の登場」です。現在はまだ限定的ですが、ドローンによる現場調査や、より安全で施工しやすい次世代足場の登場など、新しい技術が少しずつ現場を変え始めています。こうした変化に対応していく柔軟性も、今後は求められることになるでしょう。
あなたの10年後はどれ?3つのキャリア分岐点

業界の未来が「光」と「影」の両面を持つ中で、あなた自身の10年後は、どのようなキャリアを歩んでいくことになるのでしょうか。足場屋として経験を積んだ先には、大きく分けて3つの道が拓けています。どの道を選ぶかによって、働き方や収入、求められるスキルは大きく変わってきます。
ルートA:現場の王道「職長・スペシャリスト」
一つ目は、現場の第一線で技術を極め、チームを率いるリーダー、つまり「職長」を目指す道です。職長は、ただ自分の作業をするだけでなく、図面を読み解いて作業計画を立て、仲間に指示を出し、安全とスケジュールを管理する、現場の司令塔ともいえる存在です。
高い技術力はもちろん、リーダーシップやコミュニケーション能力、そして現場全体を見渡す広い視野が求められます。責任は大きいですが、その分やりがいも大きく、チームをまとめ上げて一つの大きな仕事を成し遂げた時の達成感は格別です。年収も、一般的な職人より一段階、二段階上のレベルを目指すことが可能です。
ルートB:一国一城の主「独立・経営者」
二つ目は、自分の会社を立ち上げ、経営者として歩む道です。自分の腕に絶対の自信があり、「もっと自由に、もっと大きく稼ぎたい」という気概のある人にとっては、非常に魅力的な選択肢でしょう。
ただし、この道は決して平坦ではありません。優れた職人であることと、優れた経営者であることはイコールではないからです。現場の仕事に加え、仕事を取ってくるための営業活動、従業員の雇用や給与計算、資材の管理など、すべての責任を一人で負う覚悟が必要です。しかし、その困難を乗り越えた先には、会社員では得られない大きな成功と自由が待っています。
ルートC:現場を支える「管理・教育者」
三つ目は、現場の最前線から一歩引いた立場で、その経験と知識を活かす道です。例えば、複数の現場の安全や品質、工程を管理する「施工管理」や、お客様と打ち合わせをして仕事を受注する「営業」といったポジションです。
また、会社によっては、後輩たちの技術指導や安全教育を専門に行う「教育担当」という役割もあります。年齢を重ね、体力的な負担を減らしながらも、これまで培ってきた貴重なスキルで会社と業界に貢献し続ける。これは、長く安定して働き続けるための、非常に賢明なキャリアプランの一つと言えるでしょう。
10年後、市場価値を最大化する「3つの自己投資」

10年後の自分がどのキャリアを歩んでいるにせよ、一つだけ確かなことがあります。それは、ただ言われた仕事をこなしているだけでは、残念ながら未来は拓けないということです。業界の変化に対応し、自らの市場価値を高め続けるためには、日々の仕事に加えて「自己投資」という視点が不可欠になります。ここでは、あなたの価値を最大化するための3つの具体的な方法をご紹介します。
資格取得:持っているだけで「指名される」武器になる
まず最も分かりやすく、効果的なのが資格の取得です。「とび技能士」や「足場の組立て等作業主任者」といった国家資格は、あなたの技術力を客観的に証明してくれる強力な武器になります。資格を持っていることで、任される仕事の幅が広がり、より難易度の高い現場に挑戦できるようになります。それは結果として、給与アップや昇進に直結します。
さらに、これらの資格は、あなたの名前で仕事をする上で信頼の証となります。お客様や元請けの会社から「あの資格を持っている〇〇さんにお願いしたい」と、個人として指名される機会も増えるでしょう。資格は、一度取ってしまえば一生ものの財産。忙しい中でも時間を見つけて挑戦する価値は十分にあります。
マネジメント能力:人を動かすスキルを身につける
次に意識したいのが、職長や独立を目指す上では必須となる、チームをまとめ、人を動かすための「マネジメント能力」です。これは、単に「偉そうに指示を出す」ことではありません。後輩が悩んでいれば相談に乗り、的確なアドバイスをする。仲間がミスをすれば感情的に怒るのではなく、原因を一緒に考えて次に活かす。そうした日々のコミュニケーションの積み重ねが、チーム全体の力を引き上げ、あなたへの信頼を築いていきます。
この能力は、特別な研修を受けなければ身につかないものではありません。普段の仕事の中で「どうすればチームがもっとスムーズに動くだるうか」「どう伝えれば、後輩は気持ちよく動いてくれるか」を常に意識することが、最高のトレーニングになるのです。
新技術へのアンテナ:時代の変化に乗り遅れない
最後に、業界の新しい技術やトレンドに対して、常にアンテナを張っておくことも重要です。例えば、従来よりも軽くて安全性が高く、作業効率も格段に上がる「次世代足場」は、今後ますます普及していくでしょう。こうした新しい資材の知識や組み立て技術をいち早く習得しておけば、あなたは会社の中でも貴重な存在になれます。
「昔からこのやり方だから」と古い常識に固執するのではなく、新しい情報に常に耳を傾け、積極的に学ぼうとする姿勢。その柔軟性こそが、変化の激しい時代を生き抜き、10年後も第一線で活躍し続けるための鍵となるのです。
重要:あなたの10年後は「どの会社にいるか」で決まる

ここまで、10年後も選ばれ続けるための個人の努力についてお話ししてきました。しかし、もう一つ、それと同じくらい重要な要素があります。それは、「あなたがどの会社に所属しているか」ということです。いくら向上心があっても、社員の成長を後押ししてくれない環境にいては、その努力が報われることはありません。あなたの未来は、会社選びで大きく変わるのです。
では、社員の10年後を本気で考えてくれる「良い会社」とは、どのような会社なのでしょうか。
一つの判断基準は、社員一人ひとりのキャリアプランを応援する仕組みが整っているかどうかです。例えば、「ゆくゆくは職長になりたい」「将来は独立も考えている」といった個人の目標を会社がきちんとヒアリングし、その実現のために必要な経験を積ませてくれたり、資格取得の費用を全額負担してくれたりする制度があれば、それは社員の成長を本気で支援している証拠です。
また、手掛けている現場の種類も重要です。一般的な住宅だけでなく、大規模なマンションや工場、特殊な形状の建物など、様々な現場を経験できる会社であれば、あなたの技術の幅は自然と広がっていきます。多様な経験は、どんな状況にも対応できる応用力を育て、職人としてのあなたの価値を確実に高めてくれるでしょう。
あなたの成長を会社の成長と捉え、長期的な視点で投資をしてくれる。そんな会社こそが、あなたが10年後、さらにその先も輝き続けるための最高の舞台となるはずです。
株式会社YAMANOでは、働く仲間一人ひとりが安心して成長できる環境づくりに力を入れています。興味のある方は、ぜひ私たちの働き方をご覧ください。
https://www.yamano2017.jp/workstyle
未来は悲観するものではなく、自ら創り出すもの
足場屋の10年後。それは、決して誰かに与えられるものではなく、あなた自身が考え、行動し、自らの手で創り上げていくものです。
業界には、人手不足や技術革新といった変化の波が訪れています。しかし、それは見方を変えれば、大きなチャンスです。確かな技術と学び続ける姿勢さえあれば、これからの時代、あなたの価値はますます高まっていくでしょう。
この記事を通じて、漠然としていたあなたの不安が、未来への具体的な目標に変わるきっかけとなれたなら、これほど嬉しいことはありません。「職長を目指して、まずはあの資格を取ろう」「次の現場では、後輩への伝え方を工夫してみよう」そんな小さな一歩の積み重ねが、10年後の大きな飛躍へと繋がっていきます。
未来を悲観する必要は全くありません。あなたの手の中には、未来を切り拓くための「技術」という確かな力があるのですから。
具体的な仕事内容や会社の雰囲気について、さらに詳しく知りたいと感じたら、いつでもお気軽にお問い合わせください。

